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年末調整、今年は「例年どおり」が通用しません——経営者の段取りガイド【令和8年分】

執筆者の写真: 尚生 町田
尚生 町田
10 分前
読了時間: 8分

「毎年なんとなく乗り切ってきた年末調整。今年も同じでいいですよね?」——令和8年分(2026年)は、そう言えない年です。控除の改正、新しい様式、そして12月での一括精算が重なります。10月に慌てないために、いま知っておくべきことを段取り順に整理します。


※記載は2026年9月時点の一般的な内容です。控除額・要件・様式は必ず国税庁の最新資料でご確認ください。


今年の年末調整、何が違う?——4つだけ押さえる


1. 控除の引き上げが「12月の年末調整」で一気に反映される

令和8年度の改正で、基礎控除・給与所得控除の最低保障額・扶養親族などの所得要件が引き上げられました。ここで大事なのは時期です。この改正は令和8年12月1日に施行され、11月までの毎月の源泉徴収には一切反映されません。つまり、改正の効果は12月の年末調整でまとめて精算されます。新しい源泉徴収税額表を使うのは令和9年1月の給与からです。


→ 経営者として起きること:12月の還付が例年より大きくなりやすい。従業員から「今年は手取りが違う」と聞かれる準備をしておいてください。

2. 扶養の範囲が広がった——ただし「申告書を出した人だけ」

扶養親族や配偶者の所得要件が引き上げられ、これまで対象外だった家族が対象になるケースが出てきます。ここに落とし穴があります。新たに要件を満たすようになった家族は、扶養控除等申告書に書いて提出しなければ控除されません。 自動では適用されないのです。「うちの家族、去年は扶養から外れていたけれど今年は入るかもしれない」——そう思い当たる従業員に、一声かける価値があります。扶養に入れる目安そのものの話は、「年収の壁」が変わりましたで整理しています。


3. 大学生年代の子がいる従業員には「特定親族特別控除」

19歳以上23歳未満の親族について、その親族の所得に応じて段階的に控除を受けられる仕組みです(令和7年度の改正で創設され、今年も続きます)。対象になりそうな従業員には、申告書の該当欄への記入をお願いしてください。


4. 23歳未満の扶養親族がいる人は「生命保険料控除」の特例

これは見落とされがちです。23歳未満の扶養親族がいる従業員で、新しい制度の一般の生命保険料を払っている人は、控除の計算方法と上限が通常と変わる特例の対象になります(令和8年分・9年分の2年間の措置)。保険料控除申告書には「23歳未満の扶養親族の有無」のチェック欄と、その子の氏名・個人番号・生年月日を書く「☆」欄、専用の計算式が新しく設けられています。該当する従業員には「ここを忘れないで」と伝えてください。子どもの個人番号を書く欄があるので、事前に手元に用意してもらうのがスムーズです(すでに会社に提出済みなど、記載が不要な場合もあります)。共働きで子どもを一方の扶養に入れている場合でも、夫婦の両方がこの特例を使えます。


なお、令和8年分に「定額減税」はありません(令和6年分限りの措置でした)。「去年みたいな減税はないの?」と聞かれたら、そうお答えください。


新様式のどこが変わった?——配る前に押さえる4点


国税庁は令和8年分の各種申告書の様式を6月末に公表済みです。「様式が変わった」と言われても全部を読み込む時間はないので、従業員に配る前に変わったところだけを押さえてください。


  • 1. 申告書が1枚に「合体」しています:基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除・所得金額調整控除が、ひとつの様式にまとまっています。「去年はなかった記入欄がある」と感じたらここです。

  • 2. 扶養控除等(異動)申告書は「年分」をまず確認:昨年の用紙の使い回しはNG。令和8年分の様式かどうかを最初にチェックしてください。所得要件が変わっているので、去年の判断をそのまま持ち越さないこと。

  • 3. 大学生年代の子の欄に注意:特定親族特別控除に対応する記入欄があります。対象になりそうな従業員には、記入もれがないよう一声かけると差し戻しが減ります。

  • 4. 保険料控除申告書に「23歳未満の扶養親族」の欄:「有無」のチェック欄と、その子の氏名・個人番号・生年月日を書く「☆」欄、専用の計算式が増えています。該当者はここを埋めないと特例が効きません(子どもが2人以上いても、1人書けば足ります)。


あわせて、様式の使い分けも日付で決まります。12月1日以後に年末調整を行う場合は令和8年分の様式、事情があって11月30日以前に行う場合は令和7年分の様式を補正して使います。なお、改正を反映した年末調整関係の書類は、12月1日より前に提出を受けても差し支えありません。回収は例年どおり11月に進めて構いません。


具体的な控除額・所得の基準は改正で変わり、金額を誤って案内するとかえって混乱のもとです。金額の質問は「国税庁の『令和8年分 年末調整のしかた』でご確認を」または当事務所へ——そう決めておくと担当者も迷いません。


注意:11月30日までに最後の給与が終わる人は、年末調整では終わりません


今年特有の、いちばん見落としやすい点です。改正の施行が令和8年12月1日であるために、11月30日以前に、居住者として最後の給与の支払を受けた人は、年末調整をしても改正後の控除が適用されません。


該当するのは、たとえば次のような方です。


  • 年の途中で亡くなって退職となった方

  • 海外転勤などで年の途中から非居住者になった方

  • 休職したまま復職せず、11月までで給与の支払が終わっている方


これらの方が改正の効果を受けるには、確定申告が必要です。会社の年末調整では精算しきれません。同じ理由で、11月30日以前に提出した準確定申告にも改正後の控除は反映されていないため、更正の請求などで直す道があります。該当する方がいる場合は個別にご相談ください。


該当者は多くありませんが、放っておくと本人が損をする性質のものです。今年の途中で退職・出国された方がいる会社は、名簿を一度見返してください。


段取りカレンダー(10月〜1月)


  • 10月:新様式の入手・配布、従業員への周知。「扶養の範囲が広がったので、家族の収入を改めて確認して」「新たに対象になる人は申告書に書いて」「23歳未満の子がいる人は、子の個人番号を用意して」の3点を添えると、12月の差し戻しが減ります。個人番号は記載が不要な場合もあるので、会社としてどう扱うかを先に決めておくとよいです

  • 11月:書類回収・不備チェック。保険料控除証明書の添付漏れは毎年の定番。今年は23歳未満の欄の記入漏れが加わります

  • 12月:計算→12月給与で精算。改正分がここで一気に反映されるので、従業員からの「なぜ今年は金額が違う?」に備える

  • 1月:年末調整分の源泉所得税の納付(令和9年1月12日。納期の特例なら1月20日)、源泉徴収票の交付、法定調書・給与支払報告書の提出(1月末)、償却資産申告も同時期。1月の給与から新しい源泉徴収税額表に切り替わるので、給与ソフトの更新を確認


この1月から、源泉徴収票の税務署への提出がなくなります。 市区町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署に源泉徴収票を提出したものとみなされる特例が始まります(従業員本人への交付はこれまでどおり必要です)。法定調書まわりの変更は源泉徴収票の「税務署への提出」が2027年1月からなくなりますで詳しく整理しています。


ついでに確認:4月からすでに変わっていたもの


年末調整とは別に、令和8年4月からすでに変わっているものがあります。年末調整の時期に「そういえば」と気づくことが多いので、この機会に確認してください。


  • 通勤手当の非課税の上限:遠距離通勤の区分が細かくなり、引き上げられました。駐車場の料金相当額を上乗せできる扱いも加わっています

  • 食事の現物支給:非課税として扱える上限が引き上げられました。深夜勤務の夜食に代えて渡す金銭も同様です


どちらも4月以降の支給分が対象です。4月以降を古い上限のまま処理していた場合は、年末調整までに確認しておくと安心です。


従業員に聞かれたら——想定問答


  • 「扶養の範囲、変わったの?」→「目安が引き上げられました。新たに入る家族がいる場合は、申告書に書いて出さないと反映されません。働き方を変える前に最新の数字で確認を」


  • 「大学生の子どもがいるんだけど」→「新しい控除があり、バイト代が多くても段階的に控除が受けられる場合があります。申告書に記載が必要です」


  • 「子どもがいると保険料控除が増えるって本当?」→「23歳未満の扶養親族がいて、新しい制度の生命保険料を払っている方には特例があります。保険料控除申告書の『有無』にチェックを入れ、☆欄にお子さんの氏名などを書いてください」


  • 「子どもの個人番号も書くの?」→「原則は書きます。ただし、すでに会社に提出済みなど不要な場合もあるので、担当にご確認ください」


  • 「去年みたいな減税はないの?」→「定額減税は令和6年分だけの措置でした。今年はありません」


  • 「12月の手取りがいつもと違う」→「今年は改正分の精算が12月にまとまって入るためです。1月からは毎月の税額表も新しくなります」


  • 「防衛特別所得税っていう新しい税ができたと聞いたけど、手取りが減る?」→「減りません。令和9年1月から始まりますが、復興特別所得税が同じだけ引き下げられるので合計の負担は変わりません。給与計算の方法も、納付書が1枚であることも変わりません。実質的に変わるのは復興特別所得税の終わる時期が10年先に延びたことです」


効率化のヒント:紙をやめると一気にラクに


freee人事労務などの従業員セルフ入力を使うと、配布・回収・転記がなくなり、不備の差し戻しもシステム上で完結します。新様式・新しい判定欄が増える今年こそ、紙からの切り替えの好機です。


当事務所にできること


新様式の対応、給与ソフトの設定、従業員向けの案内文づくりまで、年末調整の段取りを丸ごとサポートします。10月に始めれば、12月は慌てません。


「うちの場合、何から?」——年末調整の段取り相談はお早めに。
初回相談は30分無料です。お問い合わせフォームまたはLINEからどうぞ。

※本記事は一般的な情報提供です。2026年9月時点の内容で、控除額・要件・様式は必ず国税庁の最新の情報でご確認ください。社会保険・労務手続の詳細は社会保険労務士の領域のため、必要に応じ連携してご案内します。

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