源泉徴収票の「税務署への提出」が2027年1月からなくなります——給与支払報告書を出せばOKになる「みなし提出」のしくみ
「年明けの法定調書、源泉徴収票を税務署に出さなくてよくなるって本当ですか?」
——本当です。2027年(令和9年)1月に提出する分からになります。ただし「何もしなくてよくなる」わけではありません。市区町村への給与支払報告書を出すことが条件で、従業員への交付はこれまでどおり必要です。この記事では、給与を払っている経営者の方に向けて、変わること・変わらないこと・1月までにやることを整理します。
※記載は2026年9月時点の一般的な内容です。要件や様式は国税庁の最新資料でご確認ください。
まず土台:同じ内容の紙が「3枚」あった
従業員1人について、会社が年末に作る「1年分の給与と税金のまとめ」は、法律上は別々の書類です。
① 源泉徴収票(本人に渡す)
② 源泉徴収票(税務署に出す)
③ 給与支払報告書(従業員が住む市区町村に出す)
①②は所得税のルール、③は住民税のルールで決まっています。中身はほぼ同じなのに、出す先と「誰の分を出すか」の範囲が違っていました。ここが事業者の手間になっていた、というのが今回の改正の出発点です。
何が変わる?——「②を作らなくてよい」
2027年1月1日以降、市区町村に③給与支払報告書を提出すると、税務署に②源泉徴収票を提出したものとみなされます。これが「源泉徴収票のみなし提出の特例」です。2027年1月に提出するのは令和8年分(2026年分)ですから、令和8年分から、税務署提出用の源泉徴収票は作成も提出も不要になります。
作る枚数で言えば、「本人用①が1枚、給与支払報告書③が1枚」の計2枚です。これまでの3枚から1枚減ります。
何は変わらない?——3つ
1. 本人への交付は全員に必要
提出範囲がどうであれ、源泉徴収票はすべての従業員に交付しなければなりません。期限は翌年1月末(2027年は1月31日が日曜のため2月1日)、年の途中で退職した人は退職後1か月以内です。国内に住む外国人従業員にも交付が必要です。
紙ではなくデータで渡すこともできますが、本人の承諾が要り、本人から紙を求められれば紙で渡す必要があります。
2. 給与支払報告書は「これまでどおり」出す
みなし提出は、③を出して初めて働きます。提出先は従業員の翌年1月1日現在の住所地の市区町村、年の途中で辞めた人は退職時の住所地です。ここを出し忘れると、②を出したことにもなりません。提出の際に「給与支払報告書(総括表)」を添える点も、これまでどおりです。
なお、この特例は逆向きには働きません。税務署に②源泉徴収票を出しても、市区町村に③を出したことにはならないので、③の提出は別途必要です。
3. 給与以外の法定調書は別
税理士など専門家への報酬、事務所の家賃などの「支払調書」は、これまでどおり税務署に提出します。みなし提出で消えるのは、あくまで給与の源泉徴収票の税務署提出分だけです。
なお、支払調書などをまとめる「法定調書合計表」は、給与の源泉徴収票しか該当がない会社なら提出そのものが不要になります。支払調書を1枚でも出す会社は合計表も必要で、その場合は実際に税務署へ出す調書の分だけを書き、給与の欄は空欄で構いません。
提出範囲も変わる——「途中で辞めた人で30万円以下」を除いて全員に
これまで税務署に出す②源泉徴収票は、「一定の金額を超えた人の分だけ」でした。令和8年分からは、年の途中で退職した人でその年の給与が30万円以下の人を除き、全員が対象になります(2026年9月時点)。
「対象が広がったのに、なぜラクになるのか」と思われるかもしれません。答えは、この新しい範囲が③給与支払報告書の範囲とまったく同じだからです。もともと給与支払報告書は、途中退職者で30万円以下の人の分だけ省略できる決まりでした。源泉徴収票の範囲をそこに揃えたので、「③を出せば②も済む」がきれいに成り立つ、というしくみです。
注意:2027年1月から「電子提出が必須」になる会社が増えます
もうひとつ、同じ2027年1月提出分から効いてくる変更があります。前々年(今回は2025年中)に税務署へ提出すべきだった法定調書の枚数が、種類ごとに30枚以上だった会社は、その種類の法定調書を書面では提出できなくなります(これまでの基準は100枚以上でした。2026年9月時点)。
みなし提出と組み合わせると、次のようになります。
2025年中に税務署へ提出すべきだった源泉徴収票が30枚以上だった会社は、2027年1月の給与支払報告書もeLTAX(地方税のオンライン窓口)などで提出する必要があります。
判定は「合計」ではなく「種類ごと」です。源泉徴収票が30枚以上でも、報酬の支払調書が数枚なら、そちらは書面でも構いません。
枚数の数え方には注意点があります。数えるのは「税務署に提出すべきだった枚数」で、2027年以降も改正前の提出範囲(一定の金額を超えた人の分)で数えることになっています。みなし提出で実際には税務署に1枚も出していなくても、ゼロにはなりません。給与支払報告書の枚数をそのまま当てはめないようにしてください。
なお、これまでeLTAXにあった「給与支払報告書と源泉徴収票を同時に作って一括送信する機能」は、2026年9月で終了しています。今後は給与支払報告書だけを送る形になります。「去年と同じ操作」を前提にしないでください。
1月までの段取り(経営者がやること)
10〜11月:給与ソフトが「令和8年分・みなし提出」に対応しているか確認する。従業員の「翌年1月1日の住所」を確認しておく(提出先の市区町村が決まります)
12月:年末調整を確定する(今年の年末調整の変更点は年末調整、今年は「例年どおり」が通用しませんにまとめています)。途中退職者の源泉徴収票は退職後1か月以内の交付が原則ですが、税務署への扱いは翌年1月末にまとめてよい運用になっています
1月:eLTAXなどで給与支払報告書を提出し、受付完了通知を確認する(「税務署に出したものとみなした」という通知は来ないので、この受付完了が控えになります)。報酬・家賃などの支払調書と合計表は税務署へ。本人への源泉徴収票の交付を忘れずに
枚数が多い会社:2025年中に提出すべきだった枚数を種類ごとに数え、30枚以上の種類は電子提出の準備を今から進める
過年分がある会社:2025年分(令和7年分)以前の源泉徴収票は、この特例の対象外です。提出漏れや訂正がある場合は、従来どおり税務署へ源泉徴収票を、市区町村へ給与支払報告書をそれぞれ提出します
従業員に聞かれたら——想定問答
「今年から源泉徴収票はもらえないの?」→「もらえます。会社から本人への交付は変わりません。変わったのは、会社が税務署に出す分だけです」
「確定申告のときはどうすればいい?」→「これまでどおり、受け取った源泉徴収票の内容で申告できます。会社が給与支払報告書をeLTAXで提出した場合は、2027年2月以降、マイナポータル連携の対象になり、確定申告書に給与情報が自動入力されます」
「年の途中で辞めた人の分は?」→「退職後1か月以内に本人へ交付します。その年の給与が少額の場合は、市区町村への提出を省略できることがあります」
「提出しなくてよくなったのに、税務署から連絡が来たのですが」→「税務署への提出義務そのものは制度として残っています。そのため、記載内容の確認などで連絡が来ることはあります。驚かなくて大丈夫です」
当事務所にできること
給与ソフトの設定確認、提出先市区町村の登録、電子提出が必須になるかどうかの判定、報酬・家賃の支払調書の作成まで、1月の法定調書まわりをまとめてサポートします。年末調整と同時に段取りを組めば、1月は慌てません。
顧問税理士をお探しの段階であれば、税理士の選び方もあわせてご覧ください。
「うちは電子提出が必須になる?」「給与ソフトはこのままで大丈夫?」——1月の法定調書の相談はお早めに。
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※本記事は一般的な情報提供です。2026年9月時点の内容で、要件・様式・提出方法は必ず国税庁・eLTAXの最新の情報でご確認ください。社会保険・労務手続の詳細は社会保険労務士の領域のため、必要に応じ連携してご案内します。


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